ケアと清掃展 2025
【実施概要】
■ 大阪会場|日の出湯はなれ こいさん路地 長屋(西成区)/路地裏へようこそ2025 参加
会期:2025年9月18日(木)〜9月21日(日) 13:00~17:00 *最終日のみ10:00~15:00
所在地:〒557-0001 大阪府大阪市西成区山王2丁目7-8
■ 東京会場|花長屋(墨田区)/すみだ向島EXPO2025 参加
会期:2025年10月7日(火)〜10月12日(日)13:00~17:00
所在地:〒131-0046 東京都墨田区京島1丁目50-12
入場料:無料
【企画者ステートメント】
これまでの数年間、さまざまな清掃に関わる方々と協働し、複数の映画制作を続けてきた。なぜ私はこれほどまでに清掃という行為に取り憑かれているのか。その原点を辿ると、幼少期に目にしたある出来事の記憶に行き着く。
それは、清掃の仕事に従事する友人が、理不尽な偏見や不当な扱いを受けている現場に立ち会ってしまった、という体験だった。単なる労働ではなく、誰かにとって不可欠な営みであるはずの清掃が、社会の中でどう見られているのかという疑問と違和感が、心の奥底に残り続けているのだと思う。
そしてその想いは、高度経済成長にかげりを見せて久しい今、ますます切実さを帯びている。多くのものが使い捨てられ、人間関係までもが効率の名のもとに希薄化する中で、「手をかけて何かを清める」という行為が持つ意味は、見過ごされがちだが本質的な問いを私たちに投げかけている。
だからこそ私は、清掃という行為を「ケア」と同列に見つめ直してみたいと思った。誰かのために手を動かすこと、場を整えること、目に見えない汚れに気づき、静かにそれを引き受けること――それらは本質的に「ケア」であり、単なる作業以上のものだ。清掃とは、もっとも身近で根源的なケアのひとつなのではないかと感じている。清掃に関わる彼らの創造性に圧倒される瞬間も多々あった。
私にとって清掃とは、ケアであり、想像であり、そして創造の始まりでもあった。
映画監督として、今回紹介するいくつかのプロジェクトについて、それぞれ当初は「いつか長編映画に」という野望を抱いて撮影を重ねてきた。その思いは今も心の奥で灯り続けている。
だが、撮影を重ねるにつれて、清掃を行う現場の複雑さに途方もなさを感じるようになった。その現実は、いわゆる三幕構成のような明快な物語の枠には収まりきらない。収めてしまっては嘘になる。そこには、語られなかった声や、ささやかな動き、そして記憶の断片のようなものが静かに積み重なっていた。
私は、完成した物語としてではなく、そうした多様なまなざしが交差する清掃のプロセスを、ひらいてみたいと思うようになった。無言で何かに向き合い続ける人々の姿を通して、社会や環境、そして私たち自身との新たな関係性が立ち上がってくることを願って。(太田信吾)
【展示作品】
「秘境駅清掃人」(2022〜・ワークイン・プログレス)10分ver
周囲に人家も施設もないJR飯田線・小和田駅(浜松市天竜区)を、1人で黙々と清掃し続ける自閉症の青年・髙橋祐太さんを描いた記録映画。清掃を通じて癒され、成長していく姿と、それを見守る母のまなざしを追う。本人の「秘境駅でトレイルラン大会を開きたい」という夢に寄り添い、自治体と連携しながら続くプロジェクト。
*Yahoo!ニュース「ベストエキスパート2025」特別賞受賞
「煙突清掃人」(2024〜・ワークイン・プログレス)20分ver
命綱一本で煙突に登る「煙突屋」と呼ばれる職人たち。その一人で70年のキャリアを持つ斎藤良雄さんが、能登半島地震で被災した銭湯「あみだ湯」(石川県珠洲市)の煙突を清掃するために向かうロードムービー。職能と地域再生の交差点を見つめる映像作品。フランスとの国際共同制作プロジェクト。
*すみゆめ(2024・2025年度)/Japan Creator Support Fund採択作品
「海洋ゴミ清掃人」(2023〜・ワークイン・プログレス)10分ver
海洋ごみの漂着が日本一多い対馬を舞台に、料理人・かのうさちあ氏の挑戦を追う。漂着プラごみを素材に自作のソーラーボートを制作し、ガソリンを使わず対馬から50km先の韓国・釜山への航海を目指す試みを描く。壮大な自然の中で、環境問題に創造的に立ち向かう姿を記録した作品。
【クレジット】
映像ディレクション:太田信吾
音響技術:兼宗 真
協力:一般社団法人 日本清掃収納協会
助成:日本万国博覧会記念基金事業、東京芸術文化鑑賞サポート助成(東京会場)
企画・主催:一般社団法人ハイドロブラスト