竹中香子 企画・演出『サテライト・コール・シアター』の詳細がHPにアップされました ➡️ https://bug.art/exhibition/crawl-takenaka/
そして、本日から、ホーム・ケアリストとナラティブパートナーの執筆セッションもスタート!ドキドキ。
作品のイメージにピッタリのフライヤーデザインは芝野健太さんです。
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「サテライト・コール・シアター」は、都市に仮設された擬似的なコールセンターであり、「家」でのケアの物語に触れられる劇場です。そこでは、「家でのケア」に関する物語が上演されます。
「家」でのケアに従事する「ホーム・ケアリスト」たちは、約3ヶ月間、「ナラティブパートナー」との対話を重ね、自身のケアの物語を執筆します。会期中、会場=コールセンターには、ホーム・ケアリストそれぞれの「家」から電話がかかり、様々なモノローグが交差する「サテライト・コール・シアター」が立ち現れます。
「ケア」という行為に不確実性が満ちているように、電話がいつかかってくるかはわかりません。電話が鳴ったら、コールセンターの臨時職員としてホーム・ケアリストの「物語」や「見えない痛み」の声=台詞に耳を傾けてください。長い時間電話がかかってこないこともありますが、それまでは会場にてゆっくりとお過ごしいただけます。
【企画者コメント】
東京という街は「スマート」だ。
スマートという言葉の語源は、「痛み」らしい。痛みには他の感覚を排除させる力がある。痛みについて、思いを巡らしていると、数ヶ月前、東京駅周辺にあるオフィスビルの廊下でたまたま目にした光景が痛烈に蘇った。
打ち合わせの時間に遅れそうな私は、エレベーターを降り、足早に指定された場所に向かっている。ふと、非常階段から、押し殺された男性の声が聞こえ、足を止めた。「母さん、大丈夫?落ち着いて。薬飲んだ?会議が終わったら、すぐに帰るから。とにかく、落ち着いて。」震えるその声とセリフは、その場所には非常に不釣り合いで、私は思わず、聞かなかったことにした。私は俳優で、俳優の仕事は、他者を想像することなのに。
社会は、見えないことになっている、たくさんの「痛み」であふれている。私は、それらの「痛み」を想像することを、いつのまにか放棄してしまっていたのかもしれない。それらの「痛み」は、見えないのではなく、私が無意識に「見えないことにしていた」かもしれないのに。
見えないことになっている「痛み」を受け取るためのコールセンターを作りたいと思った。そして、そこは「劇場」となる。演劇の起点ともいわれるディオニシオス祭。ディオニシオスは、アテナイ人が抑制しようとした、生まれながらの野性的な人間性をあらわす神様だ。当時、演劇の機会というのは、人々が抑圧されたものを発散する機会であり、日常生活の中では、普通には話されることのない考えや感情を浮き彫りにすることが許される場だった。政治や社会に直接意見を言えない立場であっても、台詞(フィクション)になることで、あーだこーだ言えてしまう。
「劇場」という場が、東京という場所で行き場を失い彷徨っている物語を受けとることで、東京が「スマートシティ」から「ケアリングシティ」に生まれ変わることを願って。 (竹中香子)
会期 2025年7月4日(金)– 7月21日(月・祝)
時間 11:00-19:00
休館日 火曜日
入場料 無料
主催 BUG
共催・制作 一般社団法人ハイドロブラスト
企画・演出 竹中香子
ホーム・ケアリスト 全国から公募した「家」でのケアに従事する方々
ナラティブパートナー うちはし華英(文筆家) 佐々木将史(編集者) 田村かのこ(アートトランスレーター) 萩原雄太(演出家) 南野詩恵(劇作家・演出家・衣裳作家)
空間デザイン 中村友美
制作 佐藤瞳
プロデュース相談 武田知也(一般社団法人ベンチ)
演出相談 太田信吾(一般社団法人ハイドロブラスト)
※本企画はBUGが開催するアートワーカー(企画者)向けプログラム「CRAWL」の選出企画として開催されます。